【ソフィアちゃん観察日記②】 

 5月28日 曇りときどき雨
 天気が悪い日はたいていソフィアちゃんからご主人様にお相手をねだります。
 今日も今日とてロリコンのご主人様を誘ってベッドに入ろうとしましたが、あいにくご主人様はパソコンで将棋の対戦の最中だったので相手にして貰えませんでした。
 「だんなーちんぽ入れてよー」
 と服を引っ張っても。
 「相手してよだんなーおまんこ寂しいんだよー」
 と腕に抱きついても。
 ご主人様は「はいはい後でな」空いた左手で頭をさするだけです。
 いつも性的な欲求に悩まされている(楽しんでもいるけど)ご主人様は、強い人と対戦できる時だけはえっちな事を本当に忘れられます。
 「ちぇっ」
 ソフィアちゃんはしばらくご主人様に身体を押し付けていましたが、諦めて部屋から出て行ってしまいました。
 「あれ、せんぱいもヤりに来たの? ムリムリ、今は将棋で頭がいっぱいになってるよ。いつもはセックスで埋まってるのに」
 そして、部屋を外から眺めていた私と鉢合わせます。
 私の目的はご主人様ではなくソフィアちゃんでしたが、私は「そうなんだ、じゃあ仕方ないね」と手帳を隠しました。
 「あー暇だな。ひまひまー。出かけられそうな天気でも無いしゲームでもするかなー。せんぱいもやる?」
 「ソフィアちゃん、少しはお勉強しないと学校行けないよ」
 と私が言うと、ソフィアちゃんは呆れたように笑いました。
 「あたしは学校なんて行く気ないからねー。せんぱいは真面目だなぁ、わざわざ勉強なんかしてさ。もっと自由に生きればいいのに」
 「でも友達だって作れるんだよ?」
 「そんなんいらないね。あたしは一人で生きていくんだ。この屋敷だって、めしは食えるしベッドは空いてるし、おまけに安全に男とヤれるしで都合がいいから入り浸ってやってるだけ。あったら便利だけど、なくなったらそれまでの場所だよ」
 少しだけ不愉快そうにそう言って、ソフィアちゃんは自分の部屋にてくてくと歩いて行ってしまいました。

 私は知っています。
 ソフィアちゃんは本当は甘えたがっている事と、ソフィアちゃんは甘えるのが下手だって事を。
 前にご主人様達が言っていました。
 『マルカが子犬なら、ソフィアは子猫だ』って。
 私はご主人様にも満月さんにもよく懐いているのでよくちょろいちょろいと言われますが、二人とも大好きなので甘えたいのを隠そうとはしません。
 ですが、ソフィアちゃんはプライドが高く、素直になれないところがあります。
 特に、満月さんに対してどう接すればいいのかよくわかっていないようで、自分から遠ざけています。
 一方の満月さんも、ソフィアちゃんの悪戯や手癖の悪さ、品の無さに甘やかすわけにもいかず、鉢合えば大抵説教をしています。
 説教で済めばまだいいのですが、怒った時には罰を与えたりしています。主にお尻に対して、けっこう容赦のない罰です。
 それもきっと、私のせいと言うか、ソフィアちゃんに比べて私がまじめにしているので、ソフィアちゃんを甘やかしたら不平等だ……と考えてる所があると思います。
 私がいなければきっと、満月さんもソフィアちゃんに甘くなって、ソフィアちゃんも満月さんに反発する事が少なくなったかもしれません。
 ……私がいなければ、なんて言ったらきっと怒られちゃうな。なので、そういう事はあまり考えないようにしましょう。
 でも、ソフィアちゃんだって満月さんに甘えたいのは確かです。
 前に、満月さんが寝てる時にこっそり近づいてきて背中にくっつき、髪の毛の匂いを嗅いでいた事がありました。
 私がトイレに行きたくなって起きようとした時に足音が聞こえたので、中々起きれませんでした。
 しばらくソフィアちゃんは大きく呼吸をした後に小さく呟き、しばらくしてから起き上がって、来た時と同じようにこっそりと部屋を出ていきました。
 『お母さん……』
 その声は、普段のひょうひょうとしたソフィアちゃんの声とは全く違う、寂しそうなものでした。
 少し後に、トイレに行こうとして満月さんに付いて行ってもらおうとしたら、満月さんはすぐに目を開きました。
 もしかしたら、満月さんも起きていたのかもしれません。
 満月さんはその事について何も触れずに、私のトイレに付き合ってくれました。
 
 私はソフィアちゃんの後ろ姿を追いかけました。
 「ソフィアちゃん、今日は私もゲーム一緒にやっていい?」
 と言ったらソフィアちゃんは一瞬真顔になりましたが、すぐに嬉しそうな笑顔で答えます。
 「うん、もちろん! でもいーのかよ、勉強しないで?」
 「今日はソフィアちゃんと一緒にいるよ」
 「さっすがせんぱい! どっかの乳がでかいだけで偉ぶってるロリコンクソババアとは違って話がわかるねー」
 と悪戯っぽく言うソフィアちゃん。
 の、身体が吊り上げられてどんどん高く上っていきます。
 「あっ」
 「えっ」
 
 「乳がでかいだけで偉ぶってるロリコンクソババア、ですか。どこの誰の事でしょうね」

 これ以上なく最悪のタイミングで、満月さんが現れました。
 ソフィアちゃんの襟首を掴み、顔の高さまで持ち上げている無表情はかなり怖いです。
 「いや……別に……あねごの事じゃ……」
 冷や汗をだらだらとたらしながらも振り返ることができないソフィアちゃん。
 ああ、これは私が余計な事を言ってしまったから起こった悲劇なのでしょうか。
 「そうですか。それではその人の話をゆっくりと聞かせてもらいましょう。地下室で」
 「いやあああああああああ!! だんな! だんな助けてーーーーー!!!」
 哀れソフィアちゃんはこれから満月さんの性のはけ口にされてしまいます。私には、どうすることもできませんでした。
 「あ、そうそうマルカ」
 絶叫が響く中で満月さんは振り向き、私に(ソフィアちゃんをぶら下げてさえいなければ)優しい(ように見える)微笑みを向けます。
 「いつも真面目にしているのでサボりについてあまり厳しくは言いませんが、私に一声かけてからにしてくださいね」
 ああ、この扱いの違い。
 やっぱりご主人様に相談してみた方がいいのかもしれません。
 でも今この瞬間は、私は無力です。
 ソフィアちゃんに対して怒っている時の満月さんに下手なことを言えば、ソフィアちゃんだけじゃなくて自分も構ってほしい(≒『激しいプレイを私にもして下さい』)と勘違いされてお尻をひたすら何時間も責められたり鰻のような何かを入れられたりする恐れがあります。前されました。
 たとえ悲痛な叫びが私の名を呼んでも、私は自分かわいさにソフィアちゃんを見捨てるほかありません。
 「せんぱいーーーー!! 助けてせんぱいーーーーー!!!」
 ごめんねソフィアちゃん。
 ごめんね……。