浜辺は見渡す限り人でいっぱいだ。と言っても水着の人はほとんどおらず、大概が短パンに半袖のシャツ、あるいは長袖を腕まくりしたスタイルが多い。大抵は子供連れの親子3人組、4人組だ。それぞれが砂浜に三々五々散らばって砂泥を掘っている。
「これはなんの行事なのですか?」
 私が問うと、隣の席に座って運転をしていたミスター・サトウはちらりと見て「潮干狩りですね」と答えた。
「シオヒガリ? シオというのは調味料だったと思うのですが、それがここで取れるのですか?」
「いやいや、そうではありません。ここで取っているのはアサリなどの貝を中心とした干潟の生物です。この場合の『潮干』というのは海の満ち引きのことを言います」
 私の理解出来ていない顔を察して、ミスター・サトウが解説を加えてくれた。なるほど、とするとこれは漁の一種か。
「海に船で漕ぎ出さなくとも出来る漁もあるのですね」
「そうですね。潮干狩りは小さな子供にも簡単ということでレクリエーションとして人気です。ですから中には、掘ってもらう為に貝を撒いておいて、レクリエーション用に提供する潮干狩り場もあります」
「なるほど。それで子供連れが沢山いるのですか」
 私が納得していると、上が急に暗くなった。
「しまった。スナアラシ星人の砂塵船です。逃げないと」
 私が指摘するより早く、ミスター・サトウは車を反転させていた。ダイハツのミラは軽いエンジンを限界まで吹かして走っていく。
 スナアラシ星人は近年ここの星系と戦争状態にある星の一つだ。時々ゲリラ的・テロ的にこうして土木工事船舶を送り込んできてはこういう嫌がらせをする。民間人に被害も出るため、星民感情は極めて悪い。
 もういいだろうという辺りまで逃げてから後ろを確認すると、先ほどまで我々のいた砂浜は半分ほど埋まっており、砂塵船は沿岸警備隊の宇宙船によって撃沈されるところだった。
「我々は逃げられましたが、シオヒガリをしていた彼らは大丈夫でしょうか」
 私の疑問に、ミスター・サトウは顔をしかめながら「分かりませんが、救助活動に期待するしかないでしょう」と言った。
「なるほど、またシオヒガリをするのですね」
 ミスター・サトウが怪訝な顔をしたので私は捕捉した。
「この星の巨大な土木機械、ショベルカーと言いましたっけ? あれでもって人を掘り起こすのでしょう。まさにシオヒガリではないですか」