目が覚めると目の前に幼女がいた。何を言ってるか分からないと思うが俺も分からない。
「よかった! 新しい勇者様ですね! お待ち申し上げておりました!」
 俺は幾何学的な文様が床に描かれた地下室のようなところにいた。彼女は召喚士のようだ。見た目年齢が低いのは種族かなにかが違うのだろう。
 勇者ということは剣と魔法の世界か。チートは難しそうだが……まああの退屈な日常とオサラバ出来ただけよしとするか。
「あの、早速なのですが、これ、読んでいただけますか」
 渡された紙には、見たこともないような文字の羅列が踊っていた。おいおい、自動翻訳ぐらいは標準装備じゃないのかよ!
「あの、この世界の言語はまだ読めなくて」
「そんなことはないはずですよ。自動翻訳は標準装備のはずです……言葉も通じますし」
 言われて気付く。確かに言葉が通じるのに文字が読めないというのは不自然だ。
 もう一度文書に目を通す。辛うじて「0」とかアラビア数字らしきものや、「ℵ」などアルファベットらしきものが書いてある。
「似てる文字もある、けど、全然分からないな……」
 そう呟くと、召喚士が困ったようになって首を傾げた。
「もしかして、『知恵遅れ世界』のご出身ですか?」
「は?」
「今渡した紙には、この世界で2歳頃に習う数法の公式が詳述してあるのです。これを理解出来るのならば、この世界で生きていける知識をお持ちと認定するのですが……」
 何を言っているのか分からない。これが数学の公式ってこと? この記号の羅列が?
「ごく稀に、理解出来ない勇者の方がいるのです。召喚士の間では、その方の出身世界のことを失礼ながら、『知恵遅れ世界』と称しているのです」
 俺の顔色を察してか、召喚士が慌てて付け加えた。
「大丈夫ですよ! 知恵遅れの方とはいえ、即座に切り捨てるといったことはいたしません。必要な知識が整うまで、召喚士がしっかり面倒を見ることになっています。大丈夫です。私だって簡単に出来たた内容ですし、すぐに終わりますよ」
「その『知識』って、俺の世界だとどのぐらいの人が習うものなの?」
「はっきりとは伝えられていませんが、ダイガクインセイやキョージュといった身分の方たちのみが独占する知識だそうです」
 俺は絶望的な気分になりながら、もう一つの質問をした。
「……君、いくつ?」
「今年で4歳になります」
 ぅゎ、ょぅι"ょっょぃ。ハズレだと思ったが案外当たりだったか。