いやあ、今朝のは堪えた。叱られるのには慣れているが、ああいうのは反則だ。下手に怒鳴られるよりも気分が悪い。いや、分かってやってるんだろうけど、それにしたって背筋が凍る。
「おまけにあんな心にくる言い方しといて、中身はただのゴミ出しだものな……」
 帰宅してから今までの3時間をかけて満杯にしたゴミ袋を眺める。始めた時は終わるかどうか不安になるレベルのゴミ部屋っぷりであったが、やってみたら以外となんとかなるものだ。
「そういえば母さんは他の部屋もやって欲しいみたいなこと言ってたな」
 せめて自分の部屋だけでも……とは言われたものの、ああして半ば泣き落とされて始めた掃除を、ただ自分の部屋だけで終わらせるつもりにはなれなかった。部屋に近いところから順に、掃除して回りながらゴミを集めていく。
 掃除しているうちに、奥の部屋の前まできていた。親父の部屋だ。死んではいない、が死んだも同然、いやむしろ死んだ方がマシという人間である。部屋にはいないハズ、だがいたらいたで面倒くさいな……ホント、消えてくれたらいいのに。社会のゴミめ。

 仕事から帰ってきた母さんは、綺麗に見違えた我が家を見て感動していた。腹の虫は収まったのか、感極まって別の涙を流していた。
「あんたって子は、もうホント親孝行者で、わたしは幸せだよ……あの人に振り回されて大変なこともあるけど、あんたがいてくれればわたしは生きていけるよ」
「やめてよ、もう子供じゃないんだから」
「何言ってんの。親にとっては子供はいつまでも子供よ……どうしたの、それ?」
 母さんの目線は僕の右腕に注がれていた。さっきは気付かなかったが、いつの間にか大きな青痣が出来ていた。
「掃除の時に怪我でもしたの? 無理して変なところまでやったんじゃないでしょうね」
「いや、そんな変なことはしてないよ。ちょっと大きな粗大ゴミがあったから」
「粗大ゴミって……お金はどうしたの?」
「母さんのヘソクリから出しちゃった」
「嘘!? なんであんたが隠し場所知ってるの!?」
 ふう、なんとか誤魔化せたか。母さんの悲鳴を聞きながら僕はほっと溜息をついた。
 適当に時間を作って、ちゃんとスクラップになったかどうか後でもう一回確認しておかなくちゃな。