響く轟音、飛び交う破片。街は破壊され、人々は逃げ惑う。スクリーンに写し出される惨状に歯軋りしながら、私はオペレータに向かって怒鳴った。
「出撃許可はまだ降りないの?」
「本部からはもう少し待てとの一点張りです。祝日なので許可に時間がかかるとかなんとか」
「敵が目の前で暴れているのに祝日もクソもないでしょう!」
「無視して出撃すると責任問題となることもあると脅されています……」
 今日は桃の節句で休日だ。防衛軍の装備は基本的に官給の物で、休日は基本的に時間外使用になる。だから使用前に許可申請を出して通らなければならないというのが上の言い分だ。
「どうしてこの国の人はこうも融通がきかないのかしら……」
 ふと、指令室脇に飾ってある雛人形が目に止まった。桃の節句は女性を象徴する祭日として、この国ではもっとも盛大に祝われる行事の一つだ。街には朝から沢山の山車やら御輿やらが出ていた。
「私たちも今から祭に行こうか」
 自然と口からそんな言葉が出た。
「な!? 司令まで何を言ってるんですか!」
「そうですよ! 戦闘の最中ですよ? こういう時に冗談はやめてください」
 オペレータ達が気色ばんだが、私は意に介さなかった。
「冗談で言ったんじゃないよ。もう避難指示も出し終わっちゃったし、どうせここにいてもモニタ監視ぐらいしかすることないでしょう? ほらほら、準備色々あるよ! 急いで!」


 数分後、急拵えの巨大雛人形を乗せた御輿を担いで私たちは道を練り歩いていた。
「ほらっ、もっとシャキッと歩く! これも仕事だよー!」
 気分の上がらない職員たちに発破をかける。と、向こうから大きな影がぬうと姿を見せた。兜の飾りのような特徴のある頭部と、武者鎧のような網目状の光沢のある装甲。南の戦闘機体。私は叫んだ。
「発進!!」
 軋むような音と共に、御輿から巨大雛人形こと、我々の戦闘機体である0H1NA型ロボットが飛び出していく。目の前で繰り広げられる凄まじい戦闘を見ながらオペレータの一人が私に話しかけた。
「こんなことして本当にいいんですか?」
「いいのよ、これ戦闘じゃなくて祭の出し物だから」
「お祭の出し物に官給品を使うのはオッケーなんですか?」
「少なくとも稟議を通せとは聞いてないし」
 それに、とつけ加える。
「戦闘行為は不可避的に発生しただけだから、首は飛ばないでしょ」
 ドン、と派手な音がして、敵の首級が飛んでいった。