「どうしたの?」
「なんだか昨日からお腹の調子が悪くて……」
「なに、出るの? 出ないの?」
「んーどっちかというと出ない方? いやでも出ないわけではないんだよな……」
 夫が腹をさすりながら要領を得ない返事をした。
「ほら、血便ってあるじゃん? 赤いのが出る奴」
「なに、出たの? それって痔とか癌とか?」
「いや、血は出てないんだけどね……なんていうかさ、白いんだよ……」
「し、白い……?」
 人間ドックでバリウムを飲んだ後に出てきたものを思い浮かべる。確かにあれは白かった。けれど、私たちが検診を受けたのはもう半年も前の事だ。そんなものがまだ出ていないのだとしたら、腹が痛いどころでは済まされないだろう。
 何か、消化器系の深刻な病気なのだろうか。医者ではないので、考えてみても分かるはずもなかった。
「病院行ってきたら?」
「うーん、でもお腹痛いだけだしな」
「何言ってんの。白いうんこなんて何かの病気に決まってるでしょ! なに、怖いの? ついていってあげようか?」
「いいよ! 子供じゃないんだから。自分で行きます」
「はいはい、さっさと行った行った!」
 大丈夫、きっと大したことない。不安を吹き飛ばすように、嫌がる夫の背中を叩いて送り出した。

「それで、思いっきり力んだんだ」
「待って」
 夫が力を込めて排便シーンを語るのを両手で押し留めた。
「なんでそんなに嬉々として語るの。少しは羞恥心ってものがないの?」
「え? そりゃないわけないよ。でもこれ、人助けの話だよ? 恥ずかしいけど、同時に誇るべきことでもあると思わない?」
「思わないでしょ」
「そうかな〜? 急な火事だったから周りの人は皆パニックになってたし、そんな中冷静に自分の病気のこと思い出してパンツ下ろした僕って凄くない?」
「それだけ変態であることは凄いことだと思うけどね」
 どうしてこんな人と結婚してしまったのか。いくら尻から消火剤が出るからって、人前でケツ丸出しにして消火活動する人だとは思ってなかったし……。
「大体さ、なんで治療を断ってきちゃったわけ? お腹痛いんでしょ?」
「だって今後ここが火事になった時とかに君を助けられて便利かなーって……」
「便利かなじゃねーよ! 私は便器じゃねー!」