どこからともなく取り出した羊皮紙にさらさらと描いたのは、円盤の形をした肉を、丸パンを真っ二つにしたもので挟んでいるような絵。トーチもチギリも全く見たことがないもので、一瞬何を描いたものなのか理解できなかった。
「何ですかこれ? 新しい武器か何かですか?」
「いや、これは香辛料の一種だな。その粒を拡大してるんだ」
「料理だよ! 肉を細かくすりつぶして、それを薄く広げたものを焼いてパンで挟んでいるんだ。なんでもゲルマンとかいう土地で好んで食べられているらしい、という話を小耳に挟んだのさ」
「肉を、ねえ……」
 挽いた肉、とでも言えばいいのだろうか。肉はステーキ状のまま食べるのが常識な竜人族としては未知の領域だ。
 肉はあの食感だからこそ美味しいと思っていたのだが、民衆の間ではそうでもないのだろうか。
「ふむ、試してみる価値はありそうだな」
「そうとなったら早速試作する必要がありますね。食べる係は私として……」
「おいおい、その役は俺だよチギリちゃん」
「俺を手伝うって考えは二人ともないんだな」
 だが、悪い案ではない。
 さらなる客寄せのために、新商品の開発は必須だ。
「さて、まずは材料になるパンの調達だが」
 トーチが早速作業に取り掛かろうとしていた、その瞬間。
 静かに時が流れていた『炭火火竜』は、門戸が蹴破られる音で一気にかき乱される。

「――竜人族経営の『炭火火竜』ってのは、ここで間違いなくて?」

 姿を見せたのは、軍服で着飾った、またしても一人の少女であった。