全てが竹中の掌の上の出来事だった。首を落とされたことにも気付けない、八丁念仏の如き斬られ方で寄せられている。そのあまりの斬れ味は斬られた響がただ呆然とさせられ、それ以外に選択肢が無い、考える必要の無い同玉の一手を指せなくなるほどだった。
 8九に成った桂馬を駒台に拾い8八の玉を下げる、その僅かな動作ですら、震える指先は満足に動かない。震えを堪える為に左の手を添えて指そうとするも、既に首を落とされた肉体は痙攣して固まっている。
 指先に挟んでいた玉将が畳の上に滑り落ちると、二度跳ねて転げた。
 反則ではない。しかしこの時点で既に勝負は決している。
 己の醜態を恥じる余裕すら無く、響は向こうに座する竹中の顔を見た。
 震えを堪えきれない響に構う様子などまるでなく、恐るべき鬼手を指した余韻もまるでなく、ただ悠然と見返される。
 屈辱に堪える暇すら与えられない完敗。