五

         五の一

 下座に着いて目をつむり集中していると小寺二冠は対局十分前に現れた。どうもと頭を下げるとよろしゅう頼むと気さくな返答。
 振り駒の結果先手は響。

 ――先7六歩、後3四歩、先2六歩、後5四歩――
 中飛車。徳川の世では下手の中飛車などという諺まであったらしいが、現代では振り飛車における積極戦法の代表格。小寺二冠は居飛車党に分類されるとは言えどちらもある程度指すタイプ、特に近頃は後手番で猛威を振るう中飛車が確立されたことからこの形も良く採用している。