「――と来て現局面ですが、島津七段は形勢をどう見ます?」
 尋ねる千代に、
「どうも先手が苦しくなってる気がするな」
と銀乃介。
「その心は?」
「早い攻めが見えない。攻めるとしたら、7二金みたいに、ベタっと打ってズルズル迫るくらいしかない気がするんだが……お前、こういう手指したいか?」
 大盤の7二に金のマグネット駒をペタリと、力なく置きながら。
「まあ、見栄えする手では無いよね……で、対する後手は9五の馬がいかにも働きそうと」
 いかに未知の局面と言えどもここまで進めばある程度棋士の見方は一致する。後手優勢、先手は何かを用意しない限り苦しくなっていくだろう。
 ただし、棋士として最も気になる点はそこではない。真に検討すべきは、本局で二階堂が見せた新手の是非。
「3六歩についてはどう思う?」
「この局面をさておけば、手は成立しているんじゃないかな」
「取りあえず同感だ。本局は、後手が上手く指したのと、先手が少し気合を入れすぎた、ってところだろう……まあ、勝ち負けはまだ解らんが」
 ――先7二金、後7一桂、先6二金、後同金、先7一龍、後5一金、先5三桂不成、後同金、先4五桂、後5二金引、先2一銀、後8六歩、先8八玉、後3一金、先3三桂成、後2一金、先7四銀、後8七銀、先7七玉、後7八銀成、先同銀、後8七歩成、先6六玉――