Time Machine

 死んだような顔をしているやつを見ているだけでブッ殺したくなる。バイクで歩道に乗り上げて、髪掴んで引きずり回したくなる。なぜそう思うのか俺にもわからない。ムカつくからだと思う。
 だから今朝も、横断歩道でもないところに立って、死んだような顔をしているガキを見て胸がざわざわした。かきむしりたくなるような苛立ちだ、メガネをかけて、うつむいて、青白い顔をして、学校にいなきゃいけない時間にこんなところで立ち尽くしている。いかにも死にてぇって感じだ。生きていても楽しいことなんかこれっぽっちも無いって顔。人生のおいしいところは全部どこかのカスに巻き上げられて、そのカスのおこぼれだってハイエナどもがきれいに掃除していく。やさしい子だとかテキットーなことを親戚のババァに言われたのが人生で唯一浴びたお褒めの言葉。そんなんじゃ埋められないほどのスペックの低さが全身から漲っている。誰にも愛されないやつ。面白いことも言えなければ誰かを喜ばせたり湧かせたりする特技もない。産まれてきたのが間違いで、両親だってため息が挨拶になるほど失望している。いや、もう興味を持たれてすらいないかもしれない。そうでなければあんなにどうしようもねぇ面構えにはならない。死にたくもなる。だから俺はバイクを停めて、正気の人間が誰もいないバス通りに響き渡る声で叫んだ。
「おい! お前!」
 ガキが俺を見る。お前が――
「――お前が死ぬほどの価値なんかな、この世界のどっこにも無ぇぞ!!」
 吠えるだけ吠えて、クラッチを繋いだ。動き出すバイクがあっという間に小僧を残して加速し、最後にどんな表情をしていたのか俺に見せてくれない。構わない。人助けがしたかったわけでも自殺を否定するわけでもない。きれいに揃えられた靴に同情したわけでも、通勤途中で人死があったら寝覚めが悪かったわけでもない。べつにこんなくそったれなカスしかいねぇ世の中で、白昼堂々叫んだって構わないって思っただけだ。
 いつか、誰かに言って欲しかった言葉を。