超短編『テスト』



 P213~301(?)

 これがその授業のテスト範囲であった。
 はてな。
 ぶぅぅぅぅぅん……と怒った蜂のようなざわめきが起こり、まばらに席に座った大学生たちが意味のわからないものを黒板の右端に付け加えた教授に不平を示している。ひげもじゃの教授があたふたと説明する。
「これが私の授業の範囲です。ですが、この回で最後まで進めるかわかりませんので、やれたところまでを範囲とします」
 そして、何事もなくその日の授業は終わった。
 授業はP297まで進んだ。



 テスト当日。
 みんな一心に机に向かってペンを走らせている。
(よしよし、みんなまじめに勉強してきたようだな……ん?)
 壇上にいたひげもじゃの教授はテストの問題用紙を見てアッと声を上げた。
「すみません! この間やらないと言っていた、P298からの内容がテストに反映されてしまっています。こちらのミスです。ああ、どうしよう?」
 ひげもじゃの教授はちらっと教室内を上目に見やった。最近の大学生は蛮族化しているらしいので、ひょっとしたらペンで目玉の一つも刺されるかもしれない。この国はお受験殺人などというキチガイ沙汰を起こすババァだっている国なのだ。
 だが、
 誰一人として顔をあげない。
 黙々とテストを行進している。
 やっていなかったP298以降の論述問題をすらすらと書いている。
 ひげもじゃの教授はその時、ピンと来た。ひげをぶるぶる震わして、目に涙を浮かべて、思う。
 こいつら。



 了