「ここか……」
「人ん家を悪の巣窟みたいな目で見ないでくれる?」
 俺は高梨が住んでいるマンションを訪れていた。子供の頃から遊びに来ているので、勝手はよく知っている。オートロックを介さずにどうやって中に入ればいいのかというと、一階の空き部屋からよじ登ればいいのだ。
「よっと」
「別宮、もう無理しなくていいっ! ……お前はもう、高校生なんだ」
「高梨……」
 渾身のボケで憐れみを受けてしまった俺はどうすればいい? ベランダの柵に足をかけながら、俺は夕焼け空を見上げた。
「お前んち何号室だっけ」
「それが毎日のようにうちの茶菓子喰いにきてたやつのセリフか。702号室だ」
「高ぇところに住みやがって、このセレブが」
「ふざけんなよエレベーター停電したら買って来た豚肉が階段上ってる間に腐るんだぞ」
 俺と高梨はもう三百回くらい繰り返しているやり取りをしながらエレベーターに乗り込んだ。ゴウンゴウン。
「ここか……」
「その悩ましげな顔やめてくんねぇ? とりあえずここだよ」
 俺たちは702号室の前に立った。周囲はやけに静かだ。どこかからバラエティ番組のものと思しきデジタル音質のざわめきだけが聞こえてくる。俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。
「中に……いるのか」
「ああ……黒いのだ」
 俺たちは後々、この会話を本人の前で繰り返したことがあり、思い切りぶん殴られることになる。
 高梨に鍵を開けてもらって、俺はドアノブをそうっと開いた。ゆっくりとドアを開けていく。すると中には……
「いた……」
 玄関からまっすぐいった先に、部屋があり、その襖が開いている。見慣れた高梨家の居間にぺたんと、場違いな洋風少女が座り込んでいた。俺は目を凝らしてその容姿を覗いてみた。
 金髪だ。まァこれは悪魔なら当然だろう。浪漫だからな。
 服装はと言えば、映画なんかで見るような上流階級っぽい黒のナイトドレス。この時期に暑くないんだろうか。花嫁が身に着けるような長手袋をしているが、その色もやはり不幸の黒。その裾をドレスの片口と結びつけているサスペンダーは、なんと生きた蛇だった。テープのように薄いそれが少女の柔肌にぴたりと貼りついている。赤いルビーのような蛇の目が、チラチラとこちらを見ていた。
 問題は、その少女がひっそりとした部屋の中でしている行為。
 高梨がそわそわしている。
「おい……ヤツは何をしてる? 別宮」
 俺は視線を部屋の中から外さずに答えた。
「桃鉄」
「なんだと?」
「あいつ……桃鉄を一人でやってやがる……」
 俺の隣で高梨が口元を押さえ、溢れる涙をこらえきれずにいた。
「そんなっ……いくら暇だからってっ……!!」
「おい……昨日からあいつは何十時間やってんだ。すでに五十年目を突破しているぞ」
「うわあああああああ!!」
「ばかよせ高梨っ」
 俺の制止も聞かずに高梨は自宅に飛び込み、靴も脱がずに居間へと突撃した。ファミコンのコントローラを持った金髪黒装の少女は、ぽかんとして赤い目を瞬きながら高梨を見上げていた。
 高梨は叫ぶ。
「おい悪魔! そんな悲しいことはいますぐやめろ!」
「なっ……なっ……」
 悪魔は慄いている。
 高梨は「くっ」と目尻を親指で拭う。
「馬鹿野郎っ……会って二日目とはいえ……てめえにそんな思いをさせるくらいだったら学校休んだわっ!」
「…………いやああああああああ見ないでええええええええええ!!!!!」
 両眼を><にした少女の絶叫が響き渡り。
 その両手から真紅の炎が迸った。空気を吸い込みながら俺たちへと突進してきた業火は、そのままいけば俺たちを消し炭にしていただろう。しかし、こんなこともあろうかと手近にあった襖を外して即席の盾にすることくらいこの俺には朝飯前。テンパってコケた高梨を襖シールドで守った俺はニヤリと笑った。甘いぜ。
 そのあと普通に素手で二人まとめてボコられました。

 ○

「自己紹介が遅れましたね」
 頬についた煤と返り血をレースのハンカチで拭いながら、少女が澄ました顔で俺に言った。
「お初にお目にかかります、鈴木様」
「別宮です」
「別宮様。私、魔界の上級悪魔、レイシスフェレスと申します。以後、お見知りおきを」
 ニコっと微笑む金髪少女。しかしロリ声なので背伸びしてレディぶってるだけのガキっ子にしか思えない。悪魔と言うより小悪魔だ。
「これ、名刺になります」
「あ、どうも」
 悪魔――レイシスフェレスとやらに手渡されたやけにざらつく名刺には、角の生えた黒い顔のマークと、アラビア語のような文字が記されていた。おそらく名前だろう。名刺をもらっても返すものがないので、とりあえず生徒手帳でも渡そうかと思ったら高梨に「やめとけ、先生に怒られるぞ」と諭された。やろうとした俺が言うのもなんだが、そういう問題?
 おほん、とレイシスフェレスとやらが咳払いをする。畳にぺたんと子供座りしているのでちっとも威厳がない。
「昨夜も高梨様にお聞きしましたが……悪魔の仕事とはなんだと思いますか、別宮様」
「人間の望みを叶えてくれるんじゃないの?」
「その通り!」
 こいつ話わかるじゃん、みたいな顔で悪魔が笑った。
「私たち悪魔は、人間の願いを叶え、その代償として魂をもらう。アニメとか小説とかでもう知っていますね? ファウスト先生のお話は?」
「ウィキペディアで調べたことある」
「充分です」
 充分なんだ。
「昨夜、私は高梨様によって召喚されました。もちろん、あなた方の願いを叶えるためにです」
「呼んでません」と高梨がぶすっとして言った。レイシスフェレスはため息をついた。
「ね? これですよ。呼んでおいてチェンジを要求。男の人っていつもそう」
「いや、他の悪魔とかに来られても困る。俺には叶えたい願いとかないし」
 それはそれで寂しいことを、高梨は偉そうに言った。それに小さな悪魔は猛烈に反論した。
「なんてこと言うんです! それでもあなたは人間ですか? 隠居したご老人じゃあるまいし……もっとなんかこう、胸を滾らす野望とか、遠く気高い果てなき夢とか、ないんですか!」
「だからおっぱい触ってもいいかって聞いたじゃん」
 べっちんべっちんと高梨はしばらく金髪悪魔にブッ叩かれた。
 プレイが終わった後、高梨はコタツからケツだけ出ている状態で震えていた。
 ぜぇぜぇと息を切らしながら、レイシスが口の端から零れたヨダレを手の甲で拭った。
「お触りは禁止ってあれだけ言ったのに! 男って最低!」
「エキサイトしすぎだろ」
「ああん!?」
 ギロリ、と金髪少女に睨まれる俺。思わず目を逸らすが、美少女に鋭く見つめられてちょっと嬉しい。
「鈴木さん」
 少女がずずい、っと座った俺の目の前に仁王立ちになった。俺はもう半分スカートの中に頭突っ込むような姿勢で平伏する。鈴木じゃないんですけど。
「いいですか、私はどっちだっていいんですよ。高梨さんがダメならあなたの願いを叶えたっていいんです」
「いや、俺もべつに願いとかないんで」
「はあああああああ!?」
 思いっきりガンくれてくる金髪少女。
 この悪魔、なんか違う意味で怖い!
「もー! これだから! これだからダメなんです!」
 ドンドン、と金髪悪魔は床を踏み鳴らして泣き叫んだ。
「せっかく魔界からやってきたのに! なんて仕打ちですか! せめてギャルのパンティおくれぐらい言ったらどうなの!?」
「ギャルのパンティおくれ」
「駄目です!」
「なんで」
「それじゃ面白くないもん」
 面白くないって……
「ったく、なんなんですか、あなた方は!」
 レイシスは手をワキワキさせながら、ちょっとブチキレすぎて泣きそうな顔になった。
「私はもっとこう、人間の業とか、罪深さとか、そういうのが見たくて希望売りやってるんです。それなのに二人とも、毛の抜けた羊みたいな態度ばっかり取って。これじゃ日本はどんどんダメになってしまいますよ!」
「そんな演説みたいなこと言われても……」
「あああ、昔はこんなじゃなかった。お母さんの時代はそれはもう人間が元気で、願いも叶えまくり魂も貰いまくり、高度魔界成長期だったというのに、とほほ、どーしてこんなことに」
 しくしくと悪魔少女が泣き始めた。とりあえずセリフのところどころに死んでる言葉が混ざってるのが気になる。
「いったい何があなたたち男子高校生をそんなフヌケにしてしまったというんですか? 鈴木さん」
「平和かな」
「……そんなものはブッ壊す!!」
 窓から火球をブン投げようとする悪魔を俺と蘇った高梨が羽交い絞めにして止めた。
「やめろバカっ! 犬の散歩してる人がいるのが見えねーのか!!」
「ううう、だってだって」
 ぐすん、と悪魔は目尻を拭う。
「このままじゃ私、魔界に帰れないんですよぅ」
 俺と高梨は顔を見合わせた。
「どういうことやねん」
「言うてみい」
「実は……」
 小悪魔は居住まいを正した。
「細かい設定はウィキペディアに載せておくので省略しますが、簡単に言うと、悪魔が魔界から現実世界へやってくる時、かなり多くの魔力を消費するんです」
「どんくらい?」と高梨。
「それはもう街一個を吹き飛ばせるくらいの魔力です」
 ふふん、と小悪魔は得意げに鼻を鳴らした。
「そのおかげで、私は誰かの願いを叶えて魔力を頂かない限り、魔界へ帰れないんです」
「いい物件紹介するよ」
「ありがとうございます……ってバカ!!」
 レイシスのサイドイン・チョップをスウェーバックする高梨。
「帰れないと困るんです! せめて一人だけでも願いを叶えないと……このままじゃ私、高梨さんに衣食住をお世話させてしまうことに……」
「なんかさも断られることはないだろう、みたいな態度でしょんぼりしてくれてるところ悪いけど、もう泊めないよ。光熱費バカスカ使いやがって」
 高梨の目が笑っていない。
「まァまァ高梨、可哀想だろ」
「鈴木さん……!」
「メイド喫茶にでも身売りすれば金になるぜ」
「メイド喫茶ってそういう怖い所じゃねーから!!」
 顔を真っ赤にしたレイシスのパンチを俺は座布団で受け止めた。
「おいこら悪魔。タダで人にたかろうなんて虫が好すぎるんじゃねーか」
「うう、それは確かに」しょんぼりする悪魔。
 俺は提案してみた。
「じゃあこういうのはどうだ。高梨はお前をここに住まわせる。お前は代わりに高梨のお願いをなんでも聞いてあげる。そうすれば橋の下でダンボールに包まらなくて済むぞ」
「そっか、なるほど……いやダメじゃん!」
 バァン! とレイシスがテーブルをぶっ叩いた。湯飲み茶碗が落ちた。
「それじゃ私、全然帰れないじゃないですか魔界に!!」
「勝手に来たんだからそれぐらいは……ね?」
「違いますよ! 呼ばれたんです! 召喚召喚!! あっ、そうだ」
 ポンと掌を叩くレイシス。
「高梨さん、私を魔法陣で召喚したでしょ? なんでないんです?」
「だから俺はてめーを呼んだりしてねえの」
 高梨はすでにDSを始めている。
「だいたい俺が不世出の大魔法使いに見えるのかおめー。どっからどう見てもただの高校生だろ」
「その割には老けてますね」
「ぶっ飛ばすぞ!!」
 高梨は泣いている。
「人が気にしてることをズケズケ言いやがって……俺の心にお前が土足で入っていい玄関はない!!」
「誰が汚れた靴みたいな女ですか!!」
「言ってねーよそんなこと! ティッシュ箱投げてくるのやめて!」
 ぜぇぜぇ、とバカと悪魔が息を切らしている。俺は暇だったのでコーヒーを沸かして二人に振る舞った。
「まァ落ち着けよお前ら」
「助かるぜ別宮」
「ありがとうございます」
 ずびびー。
「とにかく」
 とレイシスがカップをテーブルに置いた。
「私、困りますからこのままじゃ。あなた方の願いを叶えるまで、ここに住みますからね! 知っています、この世界には『居住権』というものがあると」
 蚊に刺された跡のようにわずかに膨らんだ胸を張るレイシス。
「だから大人しく、願いを私に言うのです。魂と引き換えに叶えてあげますから」
「だから魂を取られるのが嫌なんだっつーの。なんか元気なくなったりするんでしょ?」
「別宮いいこと言った。それだそれ」高梨が乗っかってくる。
 どうどう、とレイシスが俺たちを抑える。
「落ち着きなさい、皆の衆。そんな意見もあろうかと、魔界も進んでいるのです。なんと……」
 ヒソヒソ話をするように、レイシスは身を乗り出してきた。
「魂の支払いは」
「……支払いは?」
「……分割払いが利くのです!!」
 カラカラカラ、と部屋の隅にいるハムスター(三郎 ♀)が回し車を回した。
「いやいやいや」と俺は手を振った。高梨はちょっと考え込んでいる。アホか。
「よくわかんないけど魂ってそんなチョコみたいにパキパキ割ったりできないでしょ。ちょっと持ってかれてもスゲェ元気なくなったりするんじゃないの?」
「大丈夫、大丈夫」レイシスはニコニコしている。
「なんとかなります」
「それローン組む時にみんな言うセリフじゃん。絶対アカン警察じゃん」
「その代わりになんでも願いが叶うんですよ?」
「貧しい胸にすら触らせてくれない女子の言うことなんて聞かないもん」
 レイシスはなおも言い募った。
「欲しいものがないってことはないでしょ? 可愛い女の子と付き合いたいとか、頭よくなりたいとか、大金持ちになりたいとか。いろいろあるじゃないですか。私、知ってます。人間という生き物は欲しいものを言葉にしたり絵にしたりすると。私たち悪魔はそれを平面次元から取り出してあげるお仕事なのです。ただ物凄く大変なので、報酬もお高くなっていますが、請け負った仕事は必ず完遂します」
 俺と高梨はウーンと唸った。
 小首を傾げて嫣然と微笑む様だけを見れば、悩殺されてしまいそうな美少女だ。
 これで一人桃鉄を死んだ目でやっていなければ魂なんてタダでくれてやってもいいと思えたかもしれない。
 確かに、なんの苦労もなく欲しいものが手に入るなら凄くラッキーな気がする。
 べつにそれほど欲しくなくても、今より状況が良くなれば損するってことはないわけだし。
 問題はそれが魂とかいうモノと釣り合うのかどうか。
 うーん。
 なんだかゾンビみたいに虚ろな目になって歩いてそう。未来の俺。
「さ、何も悩むことはないじゃありませんか」
 レイシスは両手を広げて囁く。
「どんなに願っても、魂すら売り渡したいと思っても、それを手に入れられない人もいる。あなたたちはそれを手にするチャンスに出会ったんです。それを掴まない理由なんてないでしょ? 欲しいものを言ってください。形があろうとなかろうと、あっという間に持ってきてあげますから」
「たとえば」と高梨が俺より早く言った。
「俺がスゲーリア充になりたいって願ったら、なんか変なトンチみたいなオチじゃなくて、ちゃんとリア充になれんの?」
「なれますなれます」小悪魔はコクンコクン頷いた。
「カエルの国の王様とかにしてドヤ顔したりしません。ちゃんとご想像通りに立派なイケメンにして差し上げますよ」
「んだコラ。俺の顔面が残念だとでも言いてぇのか」
「ハイ!」
 営業スマイルじゃどうやっても切り抜けられないことがあると、レイシスはちょっとの間思い知った。
 頬をつねりあげられて、しくしく泣く自称悪魔。
「ひどい。ひどすぎます」
 でも、と言い重ね、姿勢を正す。
「許してあげましょう。願い事さえ言ってくれるなら! ホラホラ。なんでもいいんですよ。流れ星を見かけた時みたいに気軽に言ってください! 自分勝手に好きなことを!」
「まァ俺はいいや。高梨に任せる」
 高梨はちょっと考え込んだ。DSを腹の上に置いて天井をぼんやり見上げている。
 やがて言った。
「リア充になりてぇ」
「なるほどなるほど」
 レイシスがウンウン頷いた。
「ぶっちゃけあんまり面白くない願い事ですが、いいでしょう、叶えてあげます。電車男みたいなラブストーリーを見るのも悪くはありませんし。恋はある日突然に始まるのです。離れては近づき、近づきは離れ。いいですね、最高です。では……」
 レイシスが背中に手を回したかと思うと、奇術師のようにポンと銀色の握りがついたステッキを取り出した。その握りは、竜の頭を模していた。くるくると振り回し、机の上に乱雑に置いてあったアニメのブルーレイディスクをパリンパリン割りながら(高梨は泣いた)、その先端をびしっと人間代表に向かって突きつけた。
「あなたの人生の意味は『リア充になりたい』、それでよろしいですね?」
「ひどい」
 高梨は粉々になった思い出の円盤を前にしてむせび泣いた。
「ひどすぎる」
「大丈夫、もうすぐ日常系アニメみたいな人生があなたを待っています。準備はよろしいですか?」
「やめた」
「え?」
「やっぱやめる。お前には頼らねぇ」
「ええええええええええええ」
 高梨は粉砕された記憶の欠片を少女のように胸に抱いて、レイシスをねめつけた。CMカットしたブルーレイ砕かれたら俺も怒る。
「このクソ悪魔が……頭来たわ。てめーにお願いごとなんて死んでも言わん!!」
「えっえっえっ」レイシスは半べそになっている。
「そ、そんなあ。あ、じゃあお願い事をそのブルーレイの修復にしたらどうでしょう?」
「お前自分で割っといて魂取るのか!! ぶっ飛ばすぞ!!」
「ひいいいいいいいい」
 仁王立ちになって強面の体育会系みたいな顔面になった高梨の雄叫びにレイシスがビビリあがってその場にへたり込んだ。
「わ、わざとじゃなかったんです。わざとじゃ……!」
「許さん。そもそも俺はお前の態度が最初から気に喰わねぇ」
「詳しく話せ高梨」
 俺は高梨の味方についた。高梨はイライラと足踏みしている。
「俺ァ子供の頃から悪魔とか神様とかいうのが嫌いなんだ。勝手に人様の顔面に都合のいいことぶら下げやがって。俺たちゃロバじゃねーぞ!! ニンジンなんて欲しけりゃてめーで取ってくるってんだ。それがロバだろ!!」
「高梨、よく言った! おい聞け悪魔。俺たちにお前なんか必要ない」
「えっえっえっ」
 後半は啜り泣きになっているレイシス。
「で、でもそれじゃあなたたち、永遠にこのままですよ? それでいいんですか? 毎日つまんないままですよ?」
「別にてめぇが言うほどつまらなくはねえ。それに永遠にこのままって言い方も気に入らねぇ。俺は……」
 そして高梨は俺も予想していなかった一言を言い放った。
「自分で勝手にリア充になってみせる!!」
「…………」
「…………」
「おいどーすんだ。お前がけしかけるからだぞ」
「そ、そんなこと言われても」
 俺と悪魔は、顔を見合わせて、一人で息巻いている高梨に気の毒な眼差しを送った。